概要
本稿では、2014年度第4クォーター現在の本邦における「トライセイル(TrySail)事案」の実体を読み解き、 我々が今後どのような姿勢でこれらの事案と向き合っていくべきなのか、 大局的な観点も含め、当面の対応の方向性について考察する。
「トライセイル(TrySail)」とは?
2011年に芸能事務所「ミュージックレイン」主催のオーディション「第2回ミュージックレイン スーパー声優オーディション」に合格し、 2012年より「ミュージックレイン」所属の声優として活動を始めた 「麻倉 もも」 「雨宮 天」 「夏川 椎菜」 の3人によるユニットである。
2014年12月21日にユニット結成が発表され、 2015年5月に同ユニット名義での1stシングルCDのリリースと、 単独1stライブの開催が予定されている。
本稿ではユニット「トライセイル(TrySail)」の活動により生じる
イベント、ライブ、ラジオ番組、CD、書籍などのあらゆるインシデントを
「トライセイル(TrySail)事案」と定義する。
(以下、「ト事案」と略記。)
「トライセイル(TrySail)」を構成する要素と背景
ト事案について考える前に、「トライセイル(TrySail)」を構成する要素と、発生の背景について整理する。
株式会社ミュージックレイン ( Music Ray'n Inc. )
ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下の「音楽出版社」兼「芸能事務所」。通称:ミューレ。 「Sony Music」グループに属する音楽レーベルであると同時に、タレントのマネジメントを行う企業である。
所属タレントは自社主催の「ミュージックレインスーパー声優オーディション」の合格者であり、 オーディション第1回の合格者4人が当時の全所属者となって、 後にその4人全員によってユニット「スフィア(Sphere)」を結成した事から、 「スフィアを運営するためのプロダクション」と言った認識で評される事がある。
「素養を見込んだ少数の若手志望者にリソースを集中して1から育て、売れっ子声優アーティストを作り出す」
と言う極めて明確なビジネススキームで動く、独特のプロダクションである。
「Sony Music」グループのパワー(アニメコンテンツビジネス界隈での影響力)を生かした大きな営業力が強みだが、
「Sony Music」グループ自体、その膨大な影響力を暴走させる事も少なくない事から※、声優ファンの間ではアンチも少なくない※。
※ 婉曲的表現
尚、ト事案の大部分は、「トライセイル(TrySail)」ユニット結成発表以前には、 その事務所名の通称から「ミューレ事案」「ミューレ案件」「ミューレ2期生事案」等と呼称されていた。
2011年に開催された「第2回ミュージックレインスーパー声優オーディション」(http://www.superseiyu.com/)は、開催当時、合格者が発表されていなかった。
「麻倉 もも」「雨宮 天」「夏川 椎菜」の3人は2012年からTVアニメ「アイカツ!」他で声優としての活動を開始していたが、当時は主要キャストでは無かったため、この3人の所属について視聴者側から参照できる情報がほとんど無く、視聴者からは特に認知されていなかったと思われる。
2013年になり、ゲームの主要キャストの一人として起用されるに当たって「ミュージックレイン所属」として紹介があり、「『スフィア』の4名に続くミュージックレイン所属声優である事(=第2回ミュージックレインスーパー声優オーディションの合格者である事)」が認知された事から、「ミュージックレイン2期生」と言う括りで呼ばれるようになる。
「スフィア」ユニット結成の経緯を鑑みて、「ミュージックレイン2期生」の3人も「スフィア」をお手本にしたプロデュースが成されるとの見方が広まっており、2014年12月のユニット結成発表も3人のファンの間では「予想通りの展開」として、ほとんど驚きも無く受け入れられた。
以上のような経緯から、3人の所属する事務所の特殊性はト事案を考える上で無視できない要素と考えられる。